
六甲道南公園
2005
兵庫県神戸市




都市のヴォイド
六甲道駅南地区再開発事業は、 1995年1月17日未明に発生した阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた地区における震災復興再開発事業の一つであり、震災発生から10年8ヶ月を経た2005年9月、六甲道南公園の竣工をもって事業の完成を迎えた。
芝生の広場を真ん中に配したこの開放的で明るい約9,300㎡の近隣公園は、災害時の一次避難地として、また隣接する区役所・自治会館と連携する災害対策本部、ボランティア拠点、物資の集積・分配地として機能する防災公園であり、平常時には駅前という立地から、近隣公園という位置付け以上に多様なニーズを受け入れる郁市のオープンスペースである。
その設計プロセスは、 これからの公園づくりの方向性を示す様々な先導的で新しい公園づくり手法の実践であった。地域防災に資する防災公園づくりはもちろんのこと、再開発地区の設計指針として策定された「郁市環境デザイン基準」や地元住民を対象とした公園計画ワークショップにもとづいて纏め上げられた空間イメージを具体的な形として場に落とし込む公園づくりを行っている。広大な芝生広場や、地下水を用いたせせらぎのプロムナード等は、こうした成果のあらわれである。
また、設計と並行して管理運営ワークショップを行い、住民主導の管理運営に向けた実質的な組織づくりと運営方針の策定を行った。これは竣工同時に住民による積極的な管理運営が開始されるという成果に結びついている。
加えて、敷地の南側約3,000㎡を対象とした国際アイデァコンペ(2001年)による最優秀案をできる限り原案のまま具現化することとし、周辺との整合を図りながら、都市のオープンスペースの一部としてこの地に定着させるランドスケープづくりを行っている。イタリアから寄贈された美しいコバルトブルーのタイルで仕上げられたモニュメンタルな広場は、芝生広場と好対照をなす独特の魅力を持つ空間として、地域のアイデンティティのひとつになりつつある。
掲載:日本造園学会造園作品選集2008No.9
ランドスケープデザイン2006年4月号No.48
建築と社会2006年1月号特集
受賞:2006年度第22回都市公園コンクール・国土交通省都市地域整備局長賞
2007年度ランドスケープコンサルタンツ協会賞優秀賞・設計部門
2007年度関西まちづくり賞
2007年度日本都市計画学会賞・計画設計賞
設計:ヘッズ
設計主任:吉武宗平(ヘッズ)