
リバーリトリート雅樂倶リヴァージュの庭
2017
富山県富山市




美術館のようなホテル
リヴァージュの庭とは、フランス語で河辺・河畔を意味し、富山県富山市郊外に位置した神通川の畔にあるスモールラグジュアリーホテル「リバーリトリート雅樂倶」の庭園名称である。ここは施主の熱意で「美術館のようなホテル」として、館内に約300種類のアートを有し、2000年の開業以来、客室、調度品、和・洋レストラン全てにおいてアートや工芸、文化を取り込み、「こだわり」を持って営業されている高級ホテルである。計画対象地は、ホテルのレストラン・レヴォ前の神通川に面した庭園であった。そこは、木レンガ床の上に数種類のアートや彫刻が並び、裏庭的な雰囲気をもった空間だったが、背後の湖面のさざ波は光を反射し、対岸に見える緑の山並みを映しこみ美しかった。
河辺の魅力を引き出す
ランドスケープデザインの目標は、雄大な神通川への眺望とさざ波の魅力に気付いてもらえる事とし、アートのオブジェで空間を意味づけるのではなく、新しい庭全体がアートとなり、眺望やさざ波という非オブジェ的なもので、緑と水に包まれたラグジュアリーな感覚を堪能できる場とした。このため既存のアート作品と木レンガを撤去し、黒と白のストライプを組み合わせた石貼り床のデザインに転換した。ストライプパターンは、さざ波のイメージを抽象化したもの。これには施工を担当した植彌加藤造園が開発した「ユニット工法」が大いに成果を上げた。
富山の伝統と立山連峰を生かす
ダム湖沿いの流木巻き上げ機を隠すコルテン鋼のデザイン・ウォールは、松本圭介氏の協力で立山三山の形の上に、富山の伝統技術である組子模様の家並みと、お米や立山杉の形がレーザーカットした透かしによって表現されている。これらと植栽や床のストライプパターンが互いに引き立て合い、新しいアートの庭としての魅力が加えられた。
掲載:日本造園学会ランドスケープ作品選集2020No.15
ランドスケープデザイン2018年6月No.12
設計:佐々木葉二+ワイズランドスケープ
設計主任:吉武宗平(ワイズランドスケープ)